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黒歴史(1997与那国島3・4・5日目)

黒歴史(1997与那国島3・4・5日目)

さて、3日目。
運命の日の与那国も晴れていた…。与那国で太陽を見ると死ぬって誰が言ってんだっけ?与那国って雨降る日あるの?

3月の太陽とはいえ、日本最西端で沖縄の太陽は容赦がない。まさに殺人光線!カンカンに晴れていると、暑すぎて動物が出てこないということを学習した私。いいかげん、あきらめムードで近くの道路をうろつくが、予想通りにタイワンツチイナゴの大群が道路を埋め尽くしているだけ。あああ、もう、イナゴいらない!パニックになったイナゴがぶつかってきて、痛い!!

殺人光線の中、意識がもうろうとしてきたところで、私は独り言を話し始めた。側溝を覗きこみ「…もしかして。君は…?」そんなことを言いながら、ニヤニヤしだした。しかしそれは単なる暑さボケじゃなかった。側溝の中には「日本で4匹しか記録が無い」とされるものが落ちていた…。

うばしゃああぁぁ!ミヤラヒメヘビ(2024年現在、Wikipediaないのね)だ!!こ・こ・こんなところに落ちてるうぅ。私の魂は、この瞬間体から抜け出し、黄色いお花畑を這いまわった。もう、泣いたら良いのか、怒ったらいいのか、わからん…。喜んだらいいと思うんだけど。

ミヤラヒメヘビを拾いあげる腕は、カタカタと振るえ、写真もいっぱい撮ったはずなのにブレブレだし。その喜びときたら、東京タワーの高さからバンジーしても良いくらいだった。(与那国ではそこまで高いところはないな!残念、バンジー出来ない…残念だなあ!)

ということで、ヒメさまはリリース。興奮の中でリリースしたので記憶が正確に残っていないのだが、ミヤラヒメヘビにバイバーイ!バイバイ!って叫んでたやつがいたような気がする。ヘビには耳ないんだけどね。この素晴らしい日をミヤラヒメヘビ発見デーとして「国民の休日」と定め、カレー屋さんでアイスでお祝いをした。アイスに加えてチャイも頼んで大フィーバー!予算(13万)ってなんだっけ?と言うほどのフィーバーっぷりだった。

急にアイスとチャイなどという、この旅では食べることなど想定されない高級品を食べすぎて胃腸が喜んだらしく、ゴロゴロ言い出した。猫のように。よしよし。ということでカレー屋さんのトイレをそそくさと借りに行った。トイレは非常に広く、暮らしても良いくらいだった。トイレと言えば、以前、西表島のURAUCHIというところで入ったお土産屋さんのトイレのドアノブの調子が悪くて、30分ぐらい閉じ込められて泣いてたこともあったっけ。助けを呼んでも、トイレが「離れ」(お土産屋さんとは別の独立した建物)で、誰も助けに来ないんだもの…。まあ、その話はとりあえず置いといて…。

カレー屋さんの広いトイレで用を足していると、ちょろちょろとヤモリが一匹飛び出してきた。尻尾にトゲトゲ。おお、ホオグロヤモリだなあ。ハッキリ言って普通種でその辺にいる種類なんだけど、こんなときは彼も輝いて見えるね。それになんと言っても、沖縄に来たんだな、とこのヤモリを見るたびに思う。しみじみと。この時、自分は本当に与那国のトイレ王子になりたいと思った。2秒くらい。家来はホオグロヤモリ。…寂しい王子だな。

この日はミヤラヒメヘビを見つけた場所に頭を向けて、幸せな眠りについた。

4日目。
起きてふと考えると、ずっと風呂に入っていないことに気がついた。右手は相変わらずマダラとシュウダの臭いがするような気がするし、髪の毛なんて無香料(有臭?)の整髪料つけたような状態で、手ぐしをすると、そのままの形で止まる。体はてらてらとした、後光が差しているようにも思える。

だって、与那国には公衆浴場無いし、浜辺のシャワー使いたいんだけど、まだ海開きしてなかったから、シャワーが使えない。いつになったら体洗えるんだ?!今までは「水のいらないシャンプー」で耐え忍んではいたけれど…。もう限界じゃ…。拠点としていた公園で水浴び大会!誰もいないことを確認して公園のトイレの裏で水浴びを開始。とりあえず、ちょっとだけさっぱりして、満足。あと2日ぐらいは持ちそうだな。2日後にはまた、あと2日ぐらいは持ちそうだ、と言ってそう。殿下にもお水を献上すると「ブシャー!(怒)シャー!!(激怒)」と、大喜びなされている。その瞬間、体の後半部からブッと大きな音を出された。私のミッションのひとつがここで達成されたため、殿下はここでリリース。最後まで怒っておられた。ごめんなさい。

殿下はとんでもないものを残していったのです…。それは、ウン〇です!
殿下、思い出をありがとう。私、この〇ンチ一生大事にするわ。
(この時のウ〇チを後に検査したんだけど、残念ながら目的とした寄生虫の痕跡は発見できず…。残念でした)

殿下のウンチで思いついたわけではないが、またカレー屋さんに行く。そしてカレー屋さんの店主さんから衝撃のお話が。
「さっき、あなたの後輩さんがここに来て、✕✕で見つけたから、これを渡してくれって」
という事で袋を渡された。のぞき込んでみると、…ミヤラヒメヘビ!!ゲフッ。カレー噴くところだった。
あっさり見つけるとは恐ろしいやつもいたものだ…。おらのミヤラヒメヘビ優越感は、たった1日で崩れ去った。なんだろう、あちこちでミヤラヒメヘビが出ているのか…?キンバトやアカガシラサギの情報をカレー屋さんのノートに残していたのも彼ら(後輩たち)だ。恐ろしいやつらだ…。

うーん、なんというか…。今までのヘビ感を覆すようなヘビだな。特別に弱そう…。ブラーミニメクラヘビみたいにしっぽでチクチクしてくるけど、攻撃というより、何かに潜り込むための推進力を得るために尾先を押し付けてくるような動き。なんとも言われない頼りない感じ…。

早速✕✕に行き、ヒメ様マークⅡをリリース。バイバーイ!バイバイ!

ちなみにこの日(4日目)も晴れていた。雨ってなんだっけ。
ミヤラヒメヘビは基本は地中性。土が乾燥しすぎたり、大雨で水を含みすぎて土の通気が悪くなったりすると動くのかもしれないね。与那国滞在の全日程、晴れていた。つまり私は実はツイていた。太陽、万歳!

…実は今まで「4個体だけ」と図鑑には書いてあったのだけど、カレー屋さんによると1995年にミヤラヒメヘビが50個体程(!!)が道路の側溝に落ちて這い上がることが出来ずに死んでいったという話を聞かせてくれた。単純なU字側溝は生き物の墓場。確かにいろいろな生き物が死んでいる。(生き物が這い上がれるような対策された側溝も使われはじめているけど、全国的に見るとまだまだなんだよね)

与那国最終日(5日目)、この日も風呂には入れず。

風呂というものにこだわるのはやめた。何かで流せばいい。それだけだ。

空はやっとドンヨリしはじめた。ちっ、いまさら遅ぇんスよ。天気の悪いフィールドもしてみたかったっス。ふと気が付くと、道路で茶色い鳥が平たくなっていた。なんじゃ、これ?轢死したものが何度か轢かれたっぽい。後で写真見せて、鳥の詳しい人に聞いたら、ヤマシギっぽいとのことだった。私には厚さ5mmの鳥の判別は難しいな…。

ミヤラヒメヘビを見つけたときに、飼育してみたいと一瞬思った。正確に言えば、身近に置いて観察したい、かな。でもまあ、餌を調達し続けるのは無理だし、地中性は環境整えるの無理だろうし、飼ってても姿が見えるわけでもないし、そもそも希少な動物だ。連れて帰っても死なせるだけだし、与那国で野生で今後も生きていけるように、機会があれば保全を訴えたほうが彼らの幸せだろうしね。

右手の匂いを与那国の土産として、与那国から石垣島へと旅立つのであった…。

与那国島のミヤラヒメヘビ(2005年の再訪時に見つけた個体)。
当時の写真は保管していた場所の火災で失ってしまいましたので、お茶濁しの写真で失礼します…。

ど~ぶつ旅行記
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蛇をメインに爬虫類、両生類、そして野生動物のことを、書いたり、話したり、撮ったり、観察しています。/北海道爬虫両棲類研究会会長。野生生物域外保全センター顧問。両爬と人のコミュニケーター。獣医師(診察業はしていません)。専門学校で両爬学、たまに野生動物学を担当。/著書:北海道爬虫類・両生類ハンディ図鑑、Old world ratsnakes(一章担当)など。

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