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黒歴史(1997与那国島1日目)

黒歴史(1997与那国島1日目)

恐ろしいものを見つけてしまった。
インターネット黎明期のころ、学生だった私は「わいるどほーむ」というホームページ(サイト)を作っていた。若さと未熟さがなせる業の「ど~ぶつ旅行記」を書いていたのだが、それがハードディスクの片隅から、久しぶりに現れたのだ。

病んで弱っている時期にこの旅行記がウザいと批評を受けて(今はすごくわかる)、それっきり引っ込めていた。しかし見直してみるとかなりの情報量。国語の「てにおは」すらもなっちゃいない、勢い任せの文章だが、死蔵させるのもなんなので、令和となった2024年に、再構築してみることにした。当時のそのまま載せると、いろいろ問題あるのでね(笑)。

あ、懐かしい気持ちでこれを読みたい時は、右下のナイトモードスイッチを押すと、昔の雰囲気のど~ぶつ旅行記に近づきます。

プロローグ
男は言った。この世界、極めてやると…。
1997年、春。大学2年生となり、両爬系フィールド屋として蕾が少し開き始めたころの私(ばいかだ)のお話である。3月初旬、私は与那国島に来ていた。与那国島は日本の国土で最西端の地。位置としては台湾の隣に位置する。なぜ、こんなところに来たのか?それは端だからだ。性格的に、端から始めてひとつひとつ見ていくのが好きなのだ。プチプチをつぶすのも、一番端から潰していく。雑巾のようにプチプチを絞り上げて全部潰してもすっきりなんてしやしない。そういう性格なのだ、仕方がない。西だ!西に行くぞ!

沖縄県や鹿児島県の離島を含む南西諸島は、生物の宝庫。関東在住の私(1997当時)からすると、見たこともない生き物ばかり。これからウザさはなるべく抑えたいですが、若かりし頃(22歳くらい)の私の動物ウォッチャーとしてのお話を始めたいと思います。

与那国編
2月。私は、「日本両生類爬虫類図鑑」(既に絶版)を眺めながらつぶやいた。『これ、見てみたいな…』その開かれたペ-ジには「ミヤラヒメヘビ」の絵が載っていた。”ミヤラヒメヘビの生息地は与那国島。まだ4個体しか見つかっていない(当時)”とか。よっしゃ、これは実物を見ないと話にならんな!と、壊れたスネーカーとしての血が騒ぎ出し、気がつけば与那国旅行計画を立てていた。

ということで、石垣島・久米島・沖縄本島もオプションに加え、3週間の旅を計画した。交通費込みで予算は13万円!(飛行機入りでこれは当時でも激安価格です)旅先の生活は、凄惨を極めることとなる…。

3月初旬、私は与那国空港に降り立った。その何も無さ(極上の誉め言葉です)にちょっと感動。与那国島の春は日照時間が短い。鳥を見る友人は毎年のように与那国に行きながら、太陽を見たことがないので『与那国で太陽を見たら死ぬ』(A,1996)という伝説を流布していた。『3月の与那国が晴れている…』これだけで感動である。緩んだ涙腺からは大量の涙。ついでに怒涛の鼻水。与那国に歓迎されているぜ、と都合の良い勘違いのルンルン気分での浜の方へ!さっそく浜辺の枯れ木で見なれない鳥を見る。安物の双眼鏡でそいつを見ると、そこにいたのはシロガシラ!!(Wikipediaのリンク張っとくので勝手に見てね!)髪の毛(?)がちょっとはねてて、白髪混じりのパンクロッカーと言ったところか。いきなりの与那国っぽい鳥に涙、鼻血の雨あられ。シロガシラの縄張りに余裕で突っ込んできたモズ(アカモズだったんだろうか…)が、超巨大なイナゴ(タイワンツチイナゴ?)を持ってきて、はやにえってた。

到着早々に南国っぽい生き物の連発(与那国じゃ普通なのか…?)に、既に体内の血も鼻から使い果たし、疲れた上に夕方なのでテントを建て始めた。すると浜の向こうのほうから地元のおじさん出現。目が合うなり激怒!『おい、ここの浜はキャンプ禁止だ!!』…うげっ!知らなかった…。キャンプ可能なのは数年前までの話だったのか(すみませんでした…)。そそくさとテントをたたみ、初日から寝るのに困る。予算13万じゃ宿にも泊まれん。仕方なく、久部良(Kubura)という集落で情報収集することにした。Kuburaに入って最初に見つけたのがカレー屋さん(2015年で閉店されたようですね…)。おお!ここが、生き物を見て歩く人間が集い集って『生き物大好きノート』を書きこむというカレー店であるな?ここでいろんな情報収集だ!と、意気込んで店に入ろうとするが、定休日攻撃を食らう…。ナンダヨ…、ついてないな…。これも与那国で太陽を見たからなのか…?

でも、ここまで来て行くあてもなくなってしまった。怒られるの覚悟で扉をたたいた。(常識を知らん学生だったから出来たんだよなぁ…)運よく店主さんがお店にいて、お話を聞いてくれた。(ありがとうございます…)しかも初対面で『与那国にミヤラヒメヘビ探しに来たよ?』というアホウな事を言っても嫌な顔一つしないで、いろいろ教えてくれた。挙句の果てには、車にのっけてドライブにまで連れていってくれた!(本当にありがとうございました…)

ドライブの途中、アオバズクを見たり、リュウキュウコノハズク(当時はセレベスコノハズクと言ってた)の「こほっ」という声を聞き、「ゴボッ」と鼻血を吹く。そして、ひたすら地面を探す。…と、突然のブレーキ!なんだ!ついにヘビか?車から飛び出し、瞬時に右手を伸ばす!(与那国には毒蛇が居ないから迷いはない)つかんだ右手には!サキシママダラ!キャーッチ!サキシママダラは、八重山諸島の夜のヘビ代表。アカマダラというヘビの先島諸島(八重山諸島+宮古諸島)の亜種だ。今回の旅でのキャッチへび第一号!しかし、こちらのハイテンションな歓喜の押し付けとは裏腹に、彼の機嫌を大変損ねたようで、私の右手の指を片っ端から咬んでいる。咬まれて大喜び。これは間違っている…。(口の中はいろんな獲物食べてて綺麗じゃないので、皆さんは必要以上に咬まれてはいけません)さらに付け加えると、このサキシママダラはびっくりするとクサいにおいを出す。私の右手その全てに激烈なる香りを充満させ、つばを飛ばしながら呪文のようにヘビ解説をする私を、カレー屋の店主さんはどういう目で見ていたのだろうか…。

ひとしきり歓迎のもてなし(体の特徴のチェック)と、記念撮影を行った後、リリース。ちょっと引いている店主さん(ヘビに?私に?)とお店に戻った。店主さんはキャンプできそうなところまで教えてくれ、更にそこまで送ってくれた。(いい人すぎる…)そこでテントを張り、マダラ臭い右手をテントから出したまま、その夜は眠りについた。

与那国島のサキシママダラ轢死体(2005年の)。
すまんのですが、当時の写真は保管していた場所の火災で失ってしまいましたので、お茶濁しの写真で失礼します…。

ど~ぶつ旅行記
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蛇をメインに爬虫類、両生類、そして野生動物のことを、書いたり、話したり、撮ったり、観察しています。/北海道爬虫両棲類研究会会長。野生生物域外保全センター顧問。両爬と人のコミュニケーター。獣医師(診察業はしていません)。専門学校で両爬学、たまに野生動物学を担当。/著書:北海道爬虫類・両生類ハンディ図鑑、Old world ratsnakes(一章担当)など。

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