*2021-9-12 Described. (記述)
*ハイライトの部分は著者の経験による主観なので、引用する場合は注意して下さい。
和名:ジムグリ(地潜)
英名:Japanese woodsnake / Japanese forest ratsnake / Burrowing ratsnake
学名:Euprepiophis conspicillata
北海道札幌市産. 撮影:ばいかだ
北海道札幌市産. 撮影:ばいかだ
生息地
北海道・本州・四国・九州・国後島・伊豆大島・佐渡島・隠岐・壱岐・屋久島・種子島。
特徴
全長70~100cm。鼻先が丸く、基本的に上唇が下唇を覆う。これは土中を前進する際に土が口の中に入らないようにするための進化だと言われる。首のくびれは無い。虹彩は褐色。背面は淡黄褐色から淡赤褐色で、黒い小斑点が散在し、頭部には数本の黒条が入る個体もいる。成熟すると小斑点は黒条は目立たなくなる傾向がある(中には老齢でも黒条が残る個体もいる)が、北海道や本州以南の高地産の個体では若くても斑点を持たないものもいる。背面頸部から胴部にかけて、薄い暗縦条を持つ個体も時に見られるが、その縦条の境界は非常に不明瞭である(脱皮前の徴候の可能性がある)。
また褐色味や赤味の強い個体が北海道や本州以南の高地では見られる。体背面の赤みが強く、斑紋がなく、腹板は市松模様が一切なく白色をしているものを俗に「アカジムグリ」と呼ぶことがある。「アカジムグリ」は過去に別種として記録されていたこともあるが、現在の見解では色彩変異の一つであり、別種とはしていない。
普通のジムグリの腹面の基色は白く、黒のチェッカー(市松)模様になっている(時に朱色も混じる)。なお北海道ではこの市松模様が1本ないし2本の縦の黒条になっているものも多い(仮に縦条型とする)。腹白型(いわゆるアカジムグリ型)は、腹部に斑紋がない。北海道の個体では皮膚色が成長とともに黒化するものが多いため、北海道の腹白型は幼蛇のうちは腹が白くても、成長に連れて黒く変色していく(腹黒型)。
こうして例を挙げると、腹板は識別のポイントになりづらいと思えるが、本州・四国・九州の平地の個体群は多くが市松模様の腹板を持つものが多いので、やはり他種との差は特徴的ではある(ニホンマムシを除く)。
タイプとしては、背面の色や模様より腹面の特徴(市松模様型・縦条型・腹白型・腹黒型)から分けておいたほうが統一感がある。(背面がアカジムグリでも腹面が市松だったり、背面がノーマルでも腹面が無紋だったりするため、いわゆるノーマルとアカジムグリだけではタイプ分けが難しい)
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
少し赤い個体。頭部や背部頂点に斑紋が少し残る
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
赤みの強い個体。頭部に斑紋が少し残るが、体部には斑紋がほとんどなく皮膚(鱗の隙間)が黒い。
群馬県産(飼育個体), 撮影:ばいかだ
幼体時の斑紋が強く残る若い個体。本州産では成長後でも幼体時の模様がうすく残るものも少なくない。
撮影協力:日本蛇族学術研究所(ジャパンスネークセンター)
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
いわゆる「アカジムグリ」タイプ(ただし腹板が黒くなってきている)の若い個体。背面に斑紋は見られない。
北海道鹿追町産, 撮影:ばいかだ
斑紋がなく、体色も赤みがない個体
北海道陸別町産, 撮影:ばいかだ
体の斑紋はないが、顔の暗条が少し残っている個体
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
幼体の斑紋が残る成体
北海道鹿追町産, 撮影:ばいかだ
頸部のくびれは目立たない独特な体型
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
上顎が下顎にかぶりこむ。正面顔は他の蛇より可愛く(?)見える
北海道恵庭市産, 撮影:ばいかだ
舌の色は暗赤色~暗紫色。
体鱗
胴の中央部付近で21列。背面中央部(最も背骨寄り)の鱗には弱いキールがあるが、目立たない。
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
鱗の下にある皮膚は、北海道の個体では成体は黒化する傾向。背面中央以外の鱗ではキールはない。
行動・習性
基本的に日中に地上及び半地中の生活をすると言われるが、夏季のように気温が上がる時期には早朝や夜間に行動するものも見られる。涼しい時期、時間帯に多く見られる。盛夏になるとと見かけにくくなる。(25℃あたりが限界か?)
環境
丘陵地から高地の森林や竹林に多い。ネズミやトガリネズミなどが多く生息する環境に見られる。河川敷の芦原などで見られることもある。
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
森林内の林道で出会いやすい。
食性
ネズミ、ジネズミ、トガリネズミ、ヒミズなど。生まれたての幼獣のような小さな獲物を好む。モグラを絞めていた例もある(捕食は出来なかった模様)。
幼蛇
背面が茶色~鮮やかな赤色で黒い小斑点(横帯状になる場合もある)がある。黒いラインが顔にかかり「くまどり」に形容されるような容貌であり、成体とはかなり雰囲気が違う。[/toggle]
京都府産, 撮影:ばいかだ
幼蛇
北海道恵庭市産, 撮影:ばいかだ
北海道では幼蛇の赤みが少なく、斑紋も小さい。
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
腹白型(アカジムグリタイプ)は幼蛇の頃から黒斑がない。
北海道津別町産, 撮影:ばいかだ
撮影のために捕獲したジムグリが産卵をし、孵化した4個体のうち、腹白型(アカジムグリタイプ)が1匹いた。親蛇も幼蛇も、捕獲地点でリリースした。(リリース直前の写真)
毒
無い。
その他
繁殖は4~6月に交尾し、7~8月に1~7卵を産む。
北海道津別町産の個体が産卵した卵, 撮影:ばいかだ
捕獲した個体が産卵した卵が孵化した
貴重度
自然状態の良い山に登れば比較的多く見られるが、平野部では多くない。日本固有種。
環境省のレッドリスト掲載種ではないが、一部の都府県でレッドデータ指定されている。特に東京都や千葉県では絶滅危惧Ⅰ類相当になっている。都道府県版のレッドリストの指定状況はこちら。IUCN版(世界版)Red-List Ver3.1でLeast Concernに指定されている。
主観
比較的大人しい種類で咬みつかない個体が多いが、全てには当てはまらない。捕まえられる時には咬まなかったのに、手でいじられいるうちにイライラするのか、後になって咬んだのが何個体かいた。白腹型(アカジムグリ)は高緯度、高標高地域で見られる傾向があり、白腹のまま成長する本州高地産のものは大変美しい。
また同じ親から生まれた卵からアカジムグリとジムグリが生まれた報告や、私も、自宅で撮影のために捕獲したジムグリが産卵し、4卵のうち1匹が白腹型・残り3匹が縦条型だったこともあり、同じ親から白腹型と縦黒条型が生まれたため、別種とかではなく、単なる個体変異と考えられる。
北海道津別町産の個体が産んだ仔, 撮影:ばいかだ
同腹仔ながら白腹型と縦条型が生まれた
京都府産, 撮影:ばいかだ
市松模様(チェックパターン)の腹板。
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
縦条型(二本)
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
縦条型(二本)
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
縦条型(一本)
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
市松模様(チェックパターン)の腹板。少し規則的。
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
市松模様(チェックパターン)の腹板。黒斑が小さい。
北海道札幌市産(死骸), 撮影:ばいかだ
白腹型
北海道釧路市産(死骸), 撮影:ばいかだ
白腹型
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
複雑なタイプ
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
黒腹型
北海道札幌市産(死骸), 撮影:ばいかだ
幼蛇の頃は市松模様型だったものが成長に伴い黒化したと思われるもの
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
黒腹型でも、尾の腹側は白い。おもしろい。
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
頚部と腹部でパターンが違うものも少なくない。
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
以下、①~⑥で北海道産白腹型が成長に伴い黒腹型に変化する様子:①
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
以下、①~⑥で北海道産白腹型が成長に伴い黒腹型に変化する様子:②
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
以下、①~⑥で北海道産白腹型が成長に伴い黒腹型に変化する様子:③
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
以下、①~⑥で北海道産白腹型が成長に伴い黒腹型に変化する様子:④
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
以下、①~⑥で北海道産白腹型が成長に伴い黒腹型に変化する様子:⑤
北海道北見市産, 撮影:ばいかだ
以下、①~⑥で北海道産白腹型が成長に伴い黒腹型に変化する様子:⑥
北海道札幌市産, 撮影:ばいかだ
日射が厳しいところより、木漏れ日で日射のある場所の方が見かけやすい
注意
当ページは「へび図鑑」の1ページです。今後も新知見等出ましたら随時更新します。内容(画像を含む)の無断転記・転載は禁止です。使用する際には「ばいかだ」に一報し、サイト名(へび図鑑)、撮影者、引用URLを掲示してください。
撮影、説明の作成は、ばいかだ(徳田龍弘)が行いました。