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ヤマカガシ

和名:ヤマカガシ(山楝蛇)
英名:Tiger keelback
学名:Rhabdophis tigrinus


神奈川県産
撮影:ばいかだ

棲息地
本州・四国・九州・佐渡島・隠岐・壱岐・五島列島・甑島列島・屋久島・種子島

特徴
全長70~150cm、褐色の地肌に黒い斑紋と赤と緑褐色が混じる。頚背部には黄色いバンドが見られるが、老熟するにつれて色が褪せる事が多い。日本のヘビの仲間では非常にカラフルな部類に入る。


神奈川県産
撮影:ばいかだ

しかしヤマカガシには非常に変異が多い。東日本ではこの色彩タイプが良く見られる。眼上板(目の上の鱗)が張り出すため、すこし目つきが鋭い。


京都府産
撮影:ばいかだ

腹板は体の前半は白~黄色で、中心部に黒い点が散在する。(黒点が存在しない個体もいる)


神奈川県産
撮影:ばいかだ

体の後半の腹板は黒くなっていくものが見られる。


神奈川県産
撮影:ばいかだ

体鱗
胴の中央部で19列。鱗には顕著なキール(隆起)があり、ざらつく。シマヘビなどとはこの点で識別しやすい。


京都府産
撮影:ばいかだ

習性
見られるのは朝~夕方が多い。まれに夜間にも行動しているものが見られる。樹木などに登るのはごくまれで、ほとんど地表で行動する。おとなしい個体が多いが、掴んだりすると咬み付いてくる個体もいるため、咬まれないように注意を!

環境
山沿いの田んぼや川沿いに多い。山地でもいるが見ることができる機会はやや少ない。餌となるカエルや魚の生活環境に多く見られる。同所的にシマヘビやヒバカリのいるところで見られるが、シマヘビが非常に多い場所ではヤマカガシはあまり多くない印象。


神奈川県産
撮影:ばいかだ

田んぼの畦などで休息するが、人に見つかると水に入って逃げようとすることが多い。

食性
カエルやおたまじゃくし、小魚を好んで食べる。

幼蛇
幼蛇は成蛇よりも赤や黄色が目立ち鮮やか。特に頚部の黄色のリングが目立つ。


千葉県産
撮影:ばいかだ

またいろいろ変異があり、これに当てはまらないタイプが散見される。
赤味が少ないタイプであったり黄色いバンドが白かったり、また体の斑紋が全く無く一瞬ヒバカリに見えるような個体も存在する。


滋賀県産
撮影:のら


ある。
症状が現れるような咬傷例は稀だが、奥歯がデュベルノイ腺という毒腺とつながっており、咬まれたときに奥歯から毒が入ると症状を呈する。


滋賀県産・毒牙
提供:(財)日本蛇族学術研究所

毒が血管に入ると血液内の凝固成分が固まり、あちこちに血栓を作ります。凝固成分は血栓を作るために消費されてしまい、古傷や咬まれ傷、歯茎・皮下などからの出血を止めることが出来なくなる。血栓は血液の流れを妨げ、結果的に赤血球などを破壊し、血色素尿を排出、血栓が腎臓の小血管につまり腎不全、出血傾向のため脳血管出血などを起こすこともあり、数日後に死亡することもある。脳内出血での死亡例があります。
治療は輸血や透析など。血清治療も可能であるが、ヤマカガシの血清は設置されている機関がほとんど無い状況である。ヤマカガシ血清が必要な場合は、(財)日本蛇族学術研究所 (0277-78-5193)へ連絡を入れるようにしてください。
ただ、ヤマカガシに咬まれて毒が入る状況は滅多に起こらない。咬むときも下の写真程度までしか口を開かないため、奥歯で咬まれるケースは非常に少ない。


広島県産
撮影:ばいかだ

また万一奥歯が当っても、奥歯には毒を挿入するための溝や管が無いため、ちょっと咬まれたくらいでは毒が入らないことが多い。毒は腺から歯の溝や管を介して送られるのではなく、歯茎からじわじわと染み出してくるので、深く咬まれてヘビがぶら下がるくらいの咬まれ方だと毒が体内に入る可能性は十分にある。


東京都産
撮影:ばいかだ
こういう咬まれ方は非常に危ない

咬傷例となったものでは、手の指間を咬まれて奥歯が皮膚に達した例がある。いろいろな偶然が起こらないと毒の注入は起こらないものと思われるが、慢心せず、ヤマカガシとの遭遇時には注意してかかる必要はある。しかし、自ら近寄ってきて咬みつきに来るようなヘビでは無い。
また後頚部の「頚腺」からも毒液を分泌し飛ばす事ができ、目に入ると強い角膜炎を起こすこともある。この写真の個体は頚背部の毒腺を浮き上がらせ、防御姿勢をとっている。


長野県産
撮影:ばいかだ

この頚部の毒はニホンヒキガエルやアズマヒキガエルを食べて得た毒を蓄積したものである。


東京都産
撮影:ばいかだ
頸腺の皮膚が破れて、毒を放出したあと。
皮膚が破れているので当然血も出る

その他
動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)により特定(危険)動物に指定されている。飼育や保管には許可が必要。
変異が多い。近畿付近の個体には腹板が黄色いものも多く、体前半部の赤味及び黒斑が少ないものが多い。写真が典型的な関西型(この個体はこの姿勢で死んでいた)。


奈良県産
撮影:ばいかだ

腹板はスタンダードタイプとあまり差は無い。腹板に黄色味を帯びている。


大阪府産
撮影:ばいかだ

黒斑がはっきりしているが、緑褐色味が無く、赤味も少ない個体も西日本では珍しくない。


広島県産
撮影:ばいかだ

逆に黒味の無い個体も見られる事がある。


滋賀県産
撮影:ばいかだ

更に赤味も黒味も無く、褐色のみの個体も稀に見られる。


滋賀県産
撮影:ばいかだ


滋賀県産
撮影:ばいかだ

こうなってくると、もう一瞬の外見での識別は困難である。鱗の形状や顔面の特徴(後述)で識別するといいかもしれない。死体で確認できたが、褐色味の非常に薄い個体も見られる。(頭部と尾部はひどい轢死体だったので割愛)


宮崎県産
撮影:ばいかだ

局地的に赤も黄色も褐色も無く、青いヤマカガシも見られる地域がある。


広島県産
撮影:ばいかだ


兵庫県産
撮影:脇坂英弥

青いヤマカガシは、著者が確認できたのは滋賀県・広島県・宮崎県。書籍等情報では千葉県南部・兵庫県。私信では四国石鎚山系・岡山・鳥取にて見られるという。
ヤマカガシのそれぞれの個体群の持つ色は赤・黒・緑の場合が多いが、青い個体や紫の個体が表れることから、構成色のうち緑は、黄色+青なのではないかと個人的に思う。青型のヤマカガシは、「赤抜け・黄抜け」の個体と呼べると思う(紫がかった個体は「黄抜け」と予想する)。
ヤマカガシの基色である赤・黒・緑(青+黄?)のうち黒以外が退色した結果、白黒っぽくなる個体もいる。


新潟県産
撮影:むしぶん

上記個体を黒化型と敢えて呼ばないのは、ほかの色が退色した結果黒くなるものの他に、全身に黒色素が強く出るものがいるからである。こちらのほうを黒化型と呼ぶほうが適切だと思う。黒化型は西日本で見られる事がある。黒が強く出ているため、体の斑紋は非常に不鮮明。


広島県産
撮影:ばいかだ


広島県産
撮影:ばいかだ

黒化型でも、頚背部の2条の毒腺が見える。


広島県産
撮影:ばいかだ

この個体は顎部から頚部の腹板は白、後半に向かうにつれて完全に黒くなっていった。


広島県産
撮影:ばいかだ


広島県産
撮影:ばいかだ

なお全身が黒いヘビが見られると、カラスヘビと呼ぶ人が多いが、種としてはシマヘビであることが多い。しかし、カラスヘビ=シマヘビと考えるのは短絡的で、ヤマカガシもこのように黒くなる個体がいるし、ニホンマムシでも黒化型は発現することがあります。
ヤマカガシもニホンマムシも有毒種なので、十分識別できないときは、カラスヘビをシマヘビ(無毒)だろうとタカをくくって掴みかかるのは控えたほうがいいでしょう。
さて、どのヘビでもすることだが、捕まえていると総排泄孔から便や尿、臭腺の匂い物質を出す。腕につくともちろん臭い。匂いはヤマカガシはそれほど強くないと著者は思っているが、人それぞれによって苦手具合が違うと思われる。(ヤマカガシは毒蛇なので触らないこと推奨です)
また、黒化型でわかりづらいが、白い分泌液が出ている周辺を境に腹板が1枚ずつから2枚ずつ(尾下板)に分かれている。この分かれる境界部にあるのが総排泄口(便や尿、卵を産む穴)であり、2枚ずつ になっている部分から先が「尾」とされる。


広島県産
撮影:ばいかだ

2008年9月に群馬県でアルビノ個体が発見された。綺麗な幼蛇でした。


群馬県産
撮影:のら

繁殖は秋に交尾、初夏に8~20卵を産む。飼育下では最大で43個の産卵記録もあり、これは恐らく他の日本産ヘビと比べても最多の記録。

貴重度
郊外の田んぼにはよくいる。もちろん、オタマジャクシやカエルが死滅してしまうような環境にはいない。昨今のカエルツボカビ病やラナウイルスなどの日本侵入で万一、カエルが激減するような事態になると、このヤマカガシ生息状況にもかなり影響を与えることになるだろう。
日本固有種。2017版環境省レッドリストでは指定はありません。都道府県版のレッドリストでは、一部都府県にて指定があります。指定状況はこちら。IUCN版(世界版)Red-List Ver3.1でも指定はありません。

うんちく
色彩のバリエーションに富みすぎるため、これが特徴!と言いづらい種類。他種の色彩変異型との識別が外見では難しい。しかし傾向として気づいた事があるのでここに記しておく。


各地域のヤマカガシ顔面
撮影:ばいかだ

顔つきはシマヘビに似る(眼上板がせり出して鋭い目つきをしている)が、写真に記したようにどのバリエーションでも目と鼻の間、上唇の鱗の間には黒条が入る事がほとんどで、シマヘビの黒化型等との識別はできるかもしれない。(ヒバカリ同様の黒条があるため、頸部の特徴から識別すること)
あとは頚部の毒腺の隆起、頸腺部の鱗の並びが他のヘビに比べて、やや雑な感じであることや、体鱗の粗いキールで確実に識別するのが無難。識別に自信が持てないときには、毒蛇なので触らないことを推奨します。また行動として、追い詰められて強い興奮をすると頚部を横に広げてキングコブラのような姿勢になる。


山口県産
撮影:ばいかだ


栃木県産
撮影:Tim Johnson


群馬県産
撮影:のら

ただ、コブラのフードを広げた威嚇姿勢は「これ以上寄ったら咬む!」という威嚇であるが、ヤマカガシの場合はフードを広げながらも、ことごとく背を見せる。つまり「咬む」威嚇ではなく、頚部の毒腺を強調した防御姿勢(咬んだら毒が出るぞ)だと推察される。またさらにいじり倒したりすると、死んだフリ(擬死行動)をすることもある。
お辞儀をしたような姿勢をとって頚腺を浮き出させたり、捕まえるためにヤマカガシを踏んずけたりすると、踏んでいる足に頚部の毒腺を叩きつけるような行動をすることもあります。急に頸部を曲げて 自分で圧迫し頸腺の毒を飛ばす事もある。ヤマカガシを触らなくてはならないときには、ヤマカガシの口と首には気をつけなければならない。

参考文献
日本動物大百科5 日高敏隆監修 平凡社
決定版日本の両生爬虫類 内山りゅう・他著 平凡社
日本のカメ・トカゲ・ヘビ 松橋利光・富田京一著 山と渓谷社
日本の爬虫両生類157 大谷勉著 文一総合出版

注意
当ページは「へび図鑑」及び「携帯へび図鑑」の1ページです。今後も新知見等出ましたら随時更新されます。なお、内容(画像を含む)の 無断転記・転載は禁止です。使用する際には「ばいかだ」に一報し、サイト名(へび図鑑)、撮影者、引用URLを掲示してください。
写真を提供してくださった「のら」さんと「脇坂英弥」さん、「むしぶん」さん、「Tim Johnson」さん、そしてジャパンスネークセンターに御礼申し上げます。「むしぶん」さんのサイトはこちらです。また、文章作成にあたり、「のら」さんに御助言いただきました。加えて御礼申し上げます。
それ以外の個体の撮影、説明の作成は、ばいかだ(徳田龍弘)が行いました。ご意見、ご興味などありましたら私のサイトもご覧ください。”Wild home